10.生活支援と復興支援の違いと留意点について (続き) <外部者(異人)論 その2>
前回の続きですが、ちょっとおさらいを。今は、1項の途中です。
<開発民俗学のアプローチの特徴>
1. 科学的な‘カッコつきの人(間)’から‘平の人’の開放
2. ‘我彼’の二分論から‘我々’への橋渡し
3. ‘人として’ ‘人間’もっと卑近的に‘自分’の可能性を広げるための‘他者’の必要性と重要性の解き明かし。
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さて、20世紀までのパラダイムでは、あるべき‘人(間)’のモデルとでもいうべきもの(理想)があり、そのモデルに近づくことにより人類は‘幸せ’になれるとでもいう、‘~イズム(主義)’の時代でした。
これは、まるで岡田斗司夫(※)の世界ですが、我々はすでに‘一つ’の‘~イズム(主義)’が完遂できれば万人が幸せになれるという無邪気な世界ではないことに気がついてしまっているのです。
つまり、世界はすでに多様であり一つの考え方にまとまれるほど‘人間’は賢くもないし謙虚でもない、また一つの‘~イズム(主義)’や‘イデオロギー’が世界を支配することはありえないし、誰もが望んで‘さえ’いないということなのですね。
※1958年生まれの‘オタキング’の岡田斗司夫氏を、私は丁度12年先輩の現代日本における稀有な知性というか哲学者であると私はリスペクトしています。こちらの記事もご参照ください。彼が1995年に著した‘パラダイム論’についての私の感想文というかメモです。
岡田斗司夫 『ぼくたちの洗脳社会』 2007年4月23日
http://homepage1.nifty.com/arukunakama/blog069.htm
http://homepage1.nifty.com/arukunakama/blog070.htm
まあ、私が言うまでもないことですが^^?
さて、私が、この1項でいいたいのは、頭のいい?人が‘頭で考えた’あるべき(想像された)人(間)を基準に、現実の人間を判断するのではなく、あるがままの人間に向き合って、そこから、つまり平の人の現実から物事を考える、少なくとも‘考えること’をスタートさせるべきだということです。
もっというと、プロトタイプの‘農民’や‘漁民’がその地域にいるのではなく、その地域にいる人は、どういう人なのか、という考え方の逆転、というかあたりまえのことですが、現場から考えろということを強く強調したい。
今までの私が関わってきた国際機関の開発調査などで感じたことは、初めに‘農民’という言葉ありきで、実際にその‘住民’がどのような生業により生活(=生存)しているのかということが見落とされていたというか、その住民‘個人’の社会における役割の多様性や多面性についての理解と含みを持たせていなかったことが、のちの計画立案の妨げや足かせになった場合もあるということです。
固有名詞は出しにくいのですが、たとえば、ある地区の住民は‘農民’であるだけではなく、漁民でもあった、つまり半農半漁民であったり(ある湖の周辺にすむ人たちの例ですが、乾季は農業、耕地が水没してしまう雨季は漁業をして生業を立てます)、農民であると共に商人であったりと、普通の‘平の人’の生存戦略は、我々の想像を超えて多様であり多彩であります。
これは、ちょっと‘考えれば’わかることではなく、そのような実例をつぶさにみることにより‘見えてくる’ことなのですが、少なくとも現場経験のない少ない人は、そのような’現実’があるという可能性を、頭の隅においておくと、(開発の)教科書に書いてあることと、‘現場’との違いのギャップに驚くことも少なくなると思います。
この項は、単純にモデル化された科学的な‘カッコつきの人(間)ありきで開発の現場を考えるのではなくて、本当に普通の人(‘平’の人)のもつ、人(間)のアイデンティティの重層性と、生活の多様性の(ある)現実を、素直に受け入れ、かつ実体として考えていきましょう、というところで、一旦、締めくくらせていただきます。
第1項 了
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