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2011年5月19日 (木)

8.生活支援と復興支援の違いと留意点について (続き)

<ステークホルダーとは (続き)>

前回、‘現地(現場)’におけるステークホルダーの一部について触れました。とりあえず、‘地域住民’と‘行政’についてのみ述べましたが、このわけ方は、あまりに大雑把過ぎるし、それぞれの中身そのものも可変的なものであり、つまり‘定義'付けにより、どのようにでも切り取れるということに言及しました。それぞれの中身を議論することは、一定の意味はあるものの、この講義では、そこには踏み込みません。

なぜか?

さて、ここで考えなくてはならないことは、誰がその‘定義’をするのかということなのです。つまり「ステークホルダー」を規定するのは、ステークホルダーの範疇に入っている‘人(たち)’ではなく、その‘現地(現場)’のいわば‘外部’にいるものであること。しかもそれは、一定の‘力’を持っている‘外部’者が、ステークホルダーの‘枠組'自体を決めてしまっているということ(事実)です。

これが、開発民俗学の一番の胆の部分です。

つまり、私が今までの社会科学全般について‘不信’を感じるところなのです。

‘科学’的であろうとすると、どうしても‘客観性’を求められ、‘恣意’的なものを排除するように求められます。しかし、それが論理の一貫性を欠く根本的な原因であり、近代‘知’の致命的な欠陥なのです。

近代科学は、‘枠’がないと成立ちません。その‘枠’は通例、森羅万象を、ある人(通例個人)が、彼(彼女)のめがね(バイアス)をもって分解することによって、いわばある一つのものを細かくわけて、しかも極限の分子や‘素粒子’まで分解して、その素粒子なりの分析結果をもって、部品を組み立てなおすことによって全体(一つのもの)を定義づけ‘わかろう’とします。

しかし、‘素粒子’そのものを見ることは不可能である(作用・反作用の関係)で、見るために何らかの力(光、レーザー、ビーム?)をあてた時点で、‘素粒子’自体が‘変質’してしまい、元の‘かたち’をすでにとどめていないのです。

つまり、分解しつくすという‘プロセス’そのものが、方法(論)として破綻してしまっているのです。物理学というか、‘(西欧的な)科学’の限界なのです。

‘(西欧的な)科学’を、もっと広く‘知’の一部だと考えると、‘知’の可能性は、一気に広まります。つまり、閉じ込められた‘(西欧的な)科学’を素直に、広くその(それを規定する)‘枠組み’から解き放つことにより、それ自体がもつ呪縛から解き放たれ、さらなる深化(進化)の可能性が生まれます。

今、私が開発民俗学で考えていることは、今までの常識とされてきた考え方の‘枠組み’自体を相対的に、'ひとつ’の‘知(恵)’と捉えなおすことにより、今現在の‘危機’を乗り越えようというところなのです。

これが、私なりの、「近代の超克」なのです。

明治や戦前の「近代の超克」と私の思想が根本的に違うことは、‘哲学’を語るのに、難しい‘言葉’はいらない。ということなのです。

その時世で広く認められた‘エスタブリッシメント’とされるものに組せず、‘平の人’の感覚で、‘常識’を疑い、足元から構築しなおす。その行為自体が‘エスタブリッシメント’そのものであるという、自己矛盾はおいておき、まあ21世紀のパラダイムは、今この時点で作っていくものなのではないのでしょうか。

かなり脱線してしまいましたが、この項では、‘外部者’が彼(彼女)の‘枠(フレームワーク)’でもって、‘現地(現場)’を規定しているという、今までの社会のあり方(通念)、そのものに疑問を持つ必要があるという問題を提起させていただきました。

次回は、いよいよ‘外部者’とはなにかについて論を進めます。

この項、了

なにか自分で書いてきて、楽しくなってきました。‘外部者’論そのものが、‘異人論’であり‘カタリスト’論なのです。まあ、次回も期待して?続きをまっていてください。

ではでは^^?

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