大衆文化史における松田聖子、そろそろ本論に入ります。第1章として、大衆歌謡(曲)とはなんなのか、そしてなぜ開発民俗学が大衆歌謡に取り組むのかについて触れてみたいと思います。
シンクロニスム(共時性)という言葉がありますが、誰でも予期せず思いもかけない全く接点のない2つもしくはそれ以上のことが同時に‘起こる’ことがあります。
寄り道ではありますが、まずそのことから書き始めたいと思います。
昨年、2012年はロンドンオリンピックの年でした。天下の国営放送?NHKがオリンピック番組のテーマ音楽を、一昨年でしょうか「げげげの女房」で「ありがとう」という曲でスマッシュヒットを放った「いきものがたり」という3人組のバントに頼んだのがきっかけだと思うのですが、NHKが依頼して「風が吹いている」という曲を作ってもらいました。その経緯をいきものがたりの日常のライブツアーに絡めたドキュメンタリーで綴った特集番組が2012年年末に再放送されたのですが、それを録画してみてみました。(オリジナルは夏にオリンピックの最中に放送されたらしいです。)
その中で、「風が吹いている」という曲を作った(作詞・作曲した)リーダーの水野良樹さんがNHKの番組のスタッフのインタヴューに答えて、いきものがたりはださいし、「みんなのうた」のようなものを、このオリンピックの曲として作りたいという意気込みを語っていました。
「みんなのうた」とは、まあそのままの意味でもあるのですが、ちょっと補足すると彼は、はっきりと「‘NHK’のみんなのうた」を意識していると明言しています。
そう、ラジオやテレビでおなじみの5分間で2曲を番組の間に、おまけのように放送する、あの‘みんなのうた’です。
いや、実は私の音楽遍歴、‘みんなのうた’出身なんです^^? 家にステレオやレコードがなかったので全くレコードを聴くという文化がなかった私の環境では、中学3年生になってようやくビートルズを知った、しかも中学2年生になって、やっと「Let it be」を岡崎市の英語のスピーチコンクールに中学校の代表として参加してみんなで歌ったのが初めてのビートルズ体験で、そのときまで、まあイエスタディぐらいは耳に聞いていたのかもしれませんが、「レットイットビー」というビートルズの究極の名曲すら知らなかったというところで、そうそう高校1年生でやっと家にステレオを買っていただいたんですよね。
まあ、そんな奥手の私が高校1年生では選択科目で音楽のクラスになったんですが、最初の音楽の授業で、好きな音楽について全員発表させられたのですが、私は「(NHKの)みんなのうた」が好きだと、まじで!答えていました^^?
実際に、中学校のころからこの番組が好きで、NHKのテキストも買って、ラジカセ(しかもモノラルのバカでかいやつ!)でエアチェックしていました。なぜか手元に「1983年4~5月号」から「1984年8・9月号」が残っていますので、ちょうど中学校2年から3年生にかけて「みんなのうた」にはまっていたのでしょう。
さて、それが一点。あと、昨年、松任矢由美さん(ユーミン)が芸能生活40周年を迎えました。2012年の年末に発売された3枚組のベスト・アルバムが大ヒット中というニューミュージック(←死語か^^?)の旗手というか、いまやJ-POPSの巨匠のひとりなのですが、彼女が「よみびと知らず」の歌を残したいとインタヴューの記事かでいっていました。これも「みんなのうた」とは言っていませんが、意味としては、(誰が作ったのかはどうてもよいような)‘みんな(にとっての)’のうたを十分意識しているといえましょう。
そうそう、ユーミンとくればJ-POPS界の巨頭として、同世代というかユーミンよりデビューは後ですが、2008年に30周年を機に解散した「サザン・オールスターズ」にふれないわけにはいかないでしょう。そう、サザンも1985年の「KAMAKURA」という2枚組みのアルバムを発表後にバンド活動を中止というかソロをやっていて、久しぶりにバンド活動を再開した1988年に発表されたシングルが、まさに「みんなのうた」でした。
そして、ようやく松田聖子に話が戻ってくるのですが、実は、先日、1980年代の「聖子プロジェクト」のプロジューサーとして活躍した風街ロマンの作詞職人・松本隆の、作詞家生活30周年の記念ボックス『風街図鑑』 全7枚組で101曲収録というCDを購入したのですが、そこで、さりげなく松本隆さんが、松田聖子さんのある曲についてこうコメントしています。以下、歌詞カード(ブック)から引用。
「松田聖子 「真冬の恋人たち」 街サイド3-15
たまたまスタジオの廊下に杉真理君がいたんで、コーラスに入ってもらったんだ。聖子さんに関しては、毎回1位を獲らなくてはいけないというプレッシャーと同時に、この時期から“みんなのうた”を作るようになった。不特定多数が誰でも一度は経験するようなことを一つ一つ歌にしていったんだ。聖子さんの数ある歌の中でも、ぼくのフェイヴァリット。」
つまり聖子さんの24曲連続シングル一位という偉業の影のプロジューサー、松本隆さんは、あきらかに「みんなのうた」を意識してそれを作った。
この、いきものがたり、ユーミン、サザン・オールスターズ、そして松田聖子さんの曲の中に流れる「みんなのうた」という記号は、いったい何を意味するのでしょうか。
そんなことを、この第1章では考察していきます。
(続く)
ではでは^^?
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