【就活講座】開発コンサルタント編⑤「面接官はこのことが知りたい」完結編
就活講座・開発コンサルタント編も、いよいよ完結編である。細かい注意点はたくさんあるのだが、ここではあえて最重要ポイントのみを確認する。
前回、「自己分析⇒自己PR」という就職活動の進め方自体に無理と問題があることを指摘した。先にのべたように、「志望動機」とつながっていない自己分析や自己PRは逆にマイナス評価である。ここでは、「自己分析」と「自己PR」で気をつけるべき点をのべる。
■自己分析の留意点
自己分析とは、自己認識であるといってもよい。いわゆる就活本やセミナーでは、さまざまなフレームワークやツールを使って、あなたの人となりを「客観的」に分類分け=ラベリングしようとする。しかし、これは、お誕生日占いなどと同じ程度に、適当で気休めに過ぎないものである可能性がある。血液型占いとか占いの類も、確かに統計解析にもとづいているといわれているが、その類型が、あなたそのものを100パーセント表すことは、ほぼありえない。
つまり、参考にするとしても、その結果で、自分が営業に向いているとか職業や業種選定の参考にするのは明らかに間違いである。このようなワークシートを複数やるより、1回でも多くのOB・OG、さらにいえば、自分の身近な大人から話を聞いたほうが、はるかに職業や業種選定の参考になる。
あと忘れてはならないのは、どんなにベテランでも、最初は初心者=フレッシュマンであったということである。みな、仕事をしながら必要な知識やスキルをみにつけていったのであって、学生の時点で「できた人」はいないことを肝に銘じよう。
■自己PRの留意点
学生さんと個別面談をしていて気になることがある。それは、特に国際協力関係でバリバリがんばりたい人は、自己PRのところで、大学での学業に全くふれずに、海外への留学経験や国際協力などに関するサークルやNPOなどの課外活動をやたらを熱く語りがちであるということ。これには、主にふたつの問題点がある。
・まず、課外活動で大活躍しているあなたにとっては不本意で心外なことだと思われるが、課外活動を強調すれば強調するほど、面接官は、あなたは、はたして大学をちゃんと卒業できるだろうかとか、大学でやるべき勉強をちゃんとしているのかなどと勘ぐってしまう。
・また、他の応募者との比較でいっても、実は留学経験やサークルやNPO活動自体は、あなたが思うほど特別なアピールとはならない。結構、高い割合でやっている人が多いため、それだけでは評価の差がつきにくい。
・つまり面接官が聞きたいことは、大学でちゃんとした「ソリッドな専門性」につながる勉強経験があるのかどうかなのである。ソリッドな専門性については後述するが、大学院生ではなく、大学生で就職する場合、この学部での4年間での学びが、これからずっと続く社会人として素養あるいは基礎学力としてカウントされる。つまり、学部生には、はっきりいって学問的な専門性を企業や団体側は、最初から求めていない。
では、学部生や大学院生は、自己PRで何を、面接官にアピールすべきなのであろうか。それは、まず最初に、大学の勉強もしっかりやったということ、卒論があれば、その要点と学習・研究の中で学んだことをいうべきであろう。つまり大学の学びをしっかりとやったうえで、自分の興味と関心にそって、留学や課題活動をがんばったというほうが面接官の立場からすれば安心感がある。こう言ってくれれば、課外活動にがんばりすぎて卒業できないかもしれない人を採用するリスクが抑えられるからだ。
次に「志望動機」で、どのように面接官にアピールをするのかをのべる。
■「志望動機」でのべるべき鉄板のふたつの最重要事項
志望動機でのべることは極論すると、ふたつだけでよい。ひとつは「ソリッドな専門性」を身につけるべく努力してきたこと。そして、「わたしは御社で役に立つことができますか」という問いのふたつだ。
・「ソリッドな専門性」のまずソリッドとは英語のsolidという単語のカタカナ読みだが意味をいうと、「固い」とか「しっかりとした」という意味である。日本語だとニュアンスが伝わりにくいので、あえて「ソリッド」とカタカナで言っている。就職活動の現場では、総合職と専門職のふたつのカテゴリーがあり、まるで別物のようにとらえられているようであるが、開発コンサルタントの実際に即していえば、基本的に開発コンサルタントは「専門職」であり、そのベースがあったうえで、特性や職務によって「総合職」的な仕事をしているといったほうが正しい。
欧米の社会では、「医師、弁護士、コンサルタント」といわれているように高度な専門職である開発コンサルタントは、何をさておいても「専門職」なのである。したがって、開発コンサルタント企業は、社員がきちんとその専門分野でクライアントからお金がいただけるようになるまで「専門家」としての教育や職務経験を積ませていく。つまり、大学生や大学院生に求めているのは、専門家として積み上げていくのにたる「専門性」があるのかに一番、興味と関心がある。
この専門性とは、グーグル先生やコピペでなんとかなるような小手先の浅知恵ではなく、きちんとそれぞれの学問分野で最低限の基礎とされるもののことである。この積み上げの基礎となる専門性をわたしは「ソリッドな専門性」と読んでいる。
このソリッドな専門性をちゃんと大学の4年間で身につけているかどうか、少なくとも身につけようと努力しているかを面接官はみている。さきの自己PRとも関連するが、このソリッドな専門性=大学での勉強について、まったく面接やエントリーシートでふれないのは、裏返してみればちゃんと勉強してこなかったなと思われても仕方がないといえよう。
・「わたしは御社で役に立つことができますか」この文句をそのまま言ったら馬鹿正直なので、少しいい方は考えよう。つまり、上にのべた「ソリッドな専門性」を大学で磨いてきたうえで、課外活動などにもがんばってきて、「わたしは、御社ではこのような仕事をすることに興味がありますが、果たして今のわたしの経験や実力でつとまりますでしょうか」と、面接官にきいてみるのである。
そうすれば、間違いなく面接官は、実際の会社の仕事や働き方に照らし合わして、なんからのフィードバックをくれるはずである。例えば、うちの会社では、あなたが望むような仕事や働き方は難しいとか、うちの会社が求めるレベルに、あなたの実力では足りないなど耳が痛いことかもしれないが具体的な回答がえられるはずである。
ここで、絶対にやってはいけないのが、「わたしは、御社でこんな仕事がしてみたいのです」と、志望先の会社などの実情を知らない状態で、一方的に自分の願望や想いだけを面接官にぶつけてしまうことである。
これは、ある部長さんから聞いた実話である。会社としても欲しい能力をもった学生さんが入社試験をうけてエントリーシート、筆記試験を通過して面接試験にまで歩を進めてきた。ところが最後の面接試験で、その学生が、自分のやりたいことを面接官である部長さんにぶつけてきてしまった。その部長さんいわく、泣く泣く選考から落としたとのことであった。つまり、その学生に対して、「あなたがどうしてもそのことがやりたいのであれば、(部長さんの会社ではなく)別の会社のほうがあなたの意欲と才能を活かせるだろう」という考え方、まさに親心から落とさざるを得なかったということである。
今までのべてきたように、この連載自体、就職活動の中でも、特に「面接試験」をいかに突破するかというところに重点をおいている。つまり、最後の最後でチャンスをふいにしてしまわないために、「ソリッドな専門性」と「自分が果たして志望の企業なりで使ってもらえるのかどうか」という二大関門を突破できるような、「自己分析」と「自己PR」を考えるべきであるという提言を理解いただけたであろうか。
最後にひとつだけいうと、就活で一番大切なことは、「相手から一緒に働いてみたい」と思われる自分を、就活をする中で見つけだせるかということにかかっている。好き嫌いというか相性が全て。自分がいくらその企業なりに惚れていても、相手から振り向いてもらえなければどうしようもない。よく、就活を恋愛に例える人も多いが、結局、その程度のものかも知れない。しかし、偶然は必然であるともいう。
就活生のあなたは、とにかく今やることで手いっぱいだと思う。しかし、それは意味のある時間であると思います。ぜひ、ここに書いたことを参考にして、納得のいく就職活動をすすめてください。ご健闘をお祈りしております。